CycleTel は、SMS携帯電話メッセージングで女性を元気付けています。
ThoughtWorksのSocial Impact Program(社会的活性化プログラム)では、低開発国の数百万人の女性へ、reproductive health(性と生殖にかかわる健康)についての重要なメッセージをモバイル通信によって伝えています。
CycleTelは、SMSを用いた効果的なファミリー計画の方法を実用化しました。具体的には次を可能としました。
Georgetown大学のIRH(The Institute of Reproductive Health)は、全世界の女性に対して、reproductive health への注意事項を指導しています。2001年に、IRHは、SDM(The Standard Days Method)の名で知られる受精に注意することによるファミリー計画を創り出しました。この方法は、女性の月経サイクルを中心とする特定の12日間だけは保護なしの性行為を避ける、という直接的で安価な方法です。これを正しく使えば、計画しない妊娠を避けるために現状でユーザが行う他の方法と比べても劣ることなく、95%有効です。
調査によれば、SDMは広い範囲で適用可能であり、低開発国においても文化的に受け入れ可能であり、そして、世界中で200万の女性を苦しめているファミリー計画についてのグローバルな未解決課題に直接的に取り組むものです。SDMを、国家的な公共の健康維持プログラムの日常のサービスの中に組み込むためには、多大な作業へのコミットが必要とされることから、IRHの研究者たちは、SDMの普及と適用を促進するために、SDMを利用者に直接的に伝える方法を取ろうとしています。知識ベースのファミリー計画のため、SDMはヘルスクリニックや地域の健康相談員とコンタクトすることを必要としません。SDMを用いるためには、女性は単純にこの方法を学び、この方法が彼女にとって適切かどうかを見るための2~3の質問に回答し、そして、月経サイクルにおいて留意すべき簡単な指示事項を守る、ことが必要です。これらのすべては、世界中の多様なレベルの読み書き能力の女性にも理解できることが証明されています。
IRHのインドオフィスの研究者たちは、ファミリー計画を必要としている女性達に直接にSDMを届ける方法として、SMS(携帯電話)テキストメッセージングを使える可能性があると考えていました。携帯電話は、低開発国において既にかなり使われており、かつ、その数は伸びています。2009年に、インドのUttar Pradesh州のLucknowにおいて、3フェーズの研究会が実施され、SDMを使いたい女性を登録して助言し、支援するために、携帯電話のテキストメッセージングが有力な手段ではないかとの検討が行われました。
この研究会は、フォーカスグループの男性と女性で運営され、インタビューが行われます。最終的には、保護なしの性行為を行うと危険である日について助言のテキストメッセージを受け取る女性との2サイクルの試行が行われました。その結果、SDMを用いる女性にとってテキストメッセージングは、有効であることがわかりました。また、それと同時にこれを用いる場合の実際上の、そして社会的な課題が指摘されました。
女性に、妊娠可能日と不可能日に送るメッセージの表現についてフィードバック情報が集められました。その結果、彼女達および夫達は、インドで広く使われているHiglish(Roman アルファベットで書かれたヒンディー語)を好み、テキストメッセージングサービスで使われている文字セットを避けていることがわかりました。女性に妊娠可能日を知らせるメッセージは、「妊娠可能/不可能」からHinglishでの「安全日/非安全日」という表現に変更されました。このほうが秘密を守りやすく、社会的に適切であったからです。
また、テキストメッセージングサービスとともにヘルプライン支援も一緒に必要であることが研究の結果わかり、現在ではこのサービスはCycleTel と呼ばれています。そして、カップルはこのサービスに対して毎月、少額の料金を払うようにしています。このことは、このサービスを続け、拡大していくために必要であり、その両方共がIRHの目的のために必須のことなのです。
Uttar Pradeshでの研究会の結果から、IRHはCycleTel のコンセプトを改善するとともに、どのようにして製品化するかを検討し始めました。コンセプトに関する医学的かつ社会学的な広範な専門技術とともに、IRHは今やアプリケーションを開発するだけでなく、無線アクセスサービスプロバイダーやインドの電話会社(これらすべてが製品化のために必須の要素です)についての複雑な世界を一緒に検討してくれるパートナーを必要としていました。最終的に、2010年末の mHealth Conference において、IRHチームはThoughtWorksに紹介されました。
数週間の間に2~3回の打ち合わせを持ったのち、ThoughtWorksのSocial Impact Program(社会的活性化プログラム)チームのメンバーが、CycleTelプロジェクトのための詳細なプロポーザルを提案し、これがIRHのすべての要求条件に合致したのです。
IRHは、早速に先に進むことを決断し、プロジェクトは2~3週間のうちに、12月の半ばにキックオフされました。2週間のQuickStart 期間を設定し、インドのCennaiのThoughtWorksのチームのところに、Washington, DCからIRHのProgram OfficerであるMeredith Puleio、そして、New Delhi からIRHのインド代表であるPriya Jha が集まりました。2週間の時間枠の中で、チームはこのアプリケーションのサポート範囲および詳細な要求項目を明確化しました。作業に当たっては、最終製品が果たすべき様々な相異なる機能に関連するユーザストーリーを壁に張り出して検討を進めました。経験や専門知識の相違にもかかわらず、このミーティングではチームとしての関係を構築しただけでなく、要求条件についての創造的な考えに火花を散らすことになりました。
壁に張り出したカードから、チームは最初の開発のスケジュールを設定しました。それから、チームは、必要とされるアプリケーションとビジネスの関係をサポートする機能群、たとえば、hosting provider、support arrangement、SMS gateway provider、wireless Telcos 等を分析、抽出しました。これらは、アプリケーションの開発そのものと並行して開発が進められました。
QuichStartが完了後、MeredithとPriyaはChennaiを去り、チームはPython/Diangoアプリケーションプラットフォームを使って、開発を開始しました。毎週、WebExの開発作業結果が、Chennaiにいる開発者とWashington, D.C. およびDelhiにいるIRHチームメンバーの間で確認されて、全員で製品が予定通りに進んでいるかどうかを確認することが出来ました。
プロジェクトの途中で、IRHは、Delhiで進めている他のCycleTelの研究プロジェクトからの結果を反映したいので、スケジュールを2~3週間延してほしい、と申し入れて来ました。ThoughtWorksは、この変更を受け入れ、作業スケジュールを延長すべくチームリソースを調整しました。計画に2~3週間が追加されましたが、プロジェクト全体は12週間丁度で完了しました。完成したアプリケーションがどのようなものであるかは、冒頭の”Highlights”に示した通りです。
このアプリケーションは、データをリアルタイムで収集し、中央のデータベースに蓄積します。研究者やプロジェクト管理者は、いつでも、インターネットに接続されたどのようなコンピュータからでも、このデータにアクセスすることが出来ます。また、周期的な時間管理、ネットワーク監視、顧客支援の機能も備わっています。この組み込まれた監視および評価システムは、IRHがそのユーザ達に真に価値のある家族計画サービスを提供することを確実にしています。
CycleTelは、2011年4月に特定の女性グループで利用され始め、IRHとThoughtWorksは、その技術がうまく働いているかを緻密に監視しています。更には、IRHは、CycleTelの”Test Market”に500人の女性に参加してもらっています。これらの調査の結果は、将来、このソフトウェアに更なる機能、例えば、メッセージの頻度の指定、好きな言語の指定などの機能、を盛り込むための情報を提供してくれます。同時に、IRHは、通信会社とのパートナーシップや他のドナーとも話し合って、インドのCycleTelを支えていくこと、そして、他の国にもCycleTelを上陸させることを検討しています。
IRHのインド代表であるPriya Jha は、次のように述べています。
「私たちがここで持っているものが通常の顧客と契約者との関係ではないことは、明確でした。そのかわりに、私たちは、私たちが持つ優れた技術を社会改革に使うために、顧客との相乗的なパートナーシップを効果的に築き上げました。」
IRHのDirector であるVictoria Jennings は次のように述べています。
「ThoughtWorksは、私たちが探し求めているものが何であるか、そしてそれが時とともに変革されていくものであることを、すぐに理解しました。私たちは、ThoughtWorksが数日のうちに作り上げたプロポーザルの深さに感銘を受けました。」
IRHのProgram OfficerであるMeredith Puleio は、次のように述べています。
「私は到着する前に、いったい、どのようにしてファミリー計画の話を、部屋いっぱいのソフトウェア開発者たちに、しかもインドで、伝えたらよいのだろうかと思案していました。しかし、ThoughtWorksのChennai Office で、私は、変革、協調、興味、動機付け、効率そして自信を持った問題解決力の息吹きに満ち満ちた環境の中に足を踏み入れたのです。」
原文:CycleTel(ThoughtWorks社サイト)
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