トレインライン(thetrainline.com)社

未来に向けたプラットフォーム

協業相手とのオフショアアジャイル開発の標準を制定しながら、ThoughtWorksは英国で最大の列車チケットのオンライン販売会社である thetrainline.com を支援し、その核となる処理方式とウェブサイトを再構築しました。今では、最大級のアジャイル開発プロジェクトとして知られるようになった200人からなる分散開発チームにより、急速に変化する市場でのthetrainline.comの成功のために必須のスピードで、数百万人の登録ユーザをサポートするWeb2.0のソリューションを開発しました。


thetrainline.com は、1997年に設立された英国で代表的な独立のオンラインチケット販売会社です。当初より、thetrainline.com は数百万のトランザクションを扱い、そのウェブサイトおよびコールセンターは、価値にして英国の列車チケットの売り上げの約18%を扱っています。


また、自分自身のウェブサイトに加えて、いくつかの列車運行会社のオンラインチケット販売とブルーチップ会社および旅行会社の列車によるビジネス旅行サービスの販売のためのウェブサイトを運用しています。

置かれている状況

市場に登場した最初の8年間は、thetrainline.com は開拓者利益を享受して急速に拡大しました。そして、その過程での2004年2月に主たる競合相手であったQjump を買収しました。thetrainline.com は、広範囲のチケット販売システムを開発し、その中には、中核的な顧客管理および予約エンジン、チケット販売キオスク、企業顧客のためのプリンターも含まれています。


この会社は沢山の製品と自宅で携帯電話でのチケット発行を含むサービスアイデアを導入しました。最近の Advance Smart Technologies社とECEBS Ltd社の買収は、全ての旅行関連会社を通じてのスマートカード技術の導入の可能性を示唆しています。


極めて厳しい競争環境下において、thetrainline.com は新しい市場の開拓とシステム運用コスト削減の必要性を感じています。そして、そのためにはプラットフォーム全体を刷新する必要があります。


そして、保守費用の削減、新機能の早期実現、ハードウェアとサービスとの優れた統合を目的とした新しいプラットフォームが設計されました。


thetrainline.com のCIOであるDavid Jack は次のように述べています。
「私達は、複雑で、技術的な挑戦度が高く、ビジネス的に重要な仕事にThoughtWorksとともに取り組みました。私達は、この未来のビジネスを成功させることにおいて彼らを信頼しました。そして、彼等はそれを達成したのです。」

挑戦

thetrainline.comが最初の年に遭遇した挑戦は、従来の巨大で単調なシステムから脱して、もっと短期間で、より安いコストで、更に大きなスケールで顧客に価値を届けることでした。


主たる挑戦は次の項目を含みます。

  • チームを50人規模から、200人規模に拡大すること
  • 過去何年もかけて開発された巨大な古いプログラムコードのアーキテクチャを抜本的に変更し、同時刻に複数の開発が並行して走ることが出来るようにすること
  • 新しいプラットフォームの開発中も従来の主要顧客を満足させること

解決策に向けての作業

上記の挑戦課題に向けてのThoughtWorksのアプローチは、「フェーズ化されたアーキテクチャ再構成」アプローチでした。対象システムは、ある期間をかけて最大級の生産性とスケーラビリティを配慮しつつ、改革が進められたのです。


  • 最初のステップは、課題とその解決策についての共通の理解を確立することでした。対話型の訓練、討議そしてプロトタイプの素早い開発がプロジェクトのロードマップに組み込まれました。これにより、技術的なリスクがどこにあるかを確認し、それを軽減するための方策を開発していったのです。
  • ガバナンスモデル(意思決定モデル)をしっかりと定義することにより、スポンサーとオーナーを明確にし、両者間の協調的議論を実現し、中心的な利害関係者による優先度付けを可能としました。
  • 専用ビデオ会議、WebExとInstant Messengerを活用し、そして、ThoughtWorks とthetrainline.comのメンバーが、Bangalore, Pune そして英国の現場を訪問し、高頻度の連絡をとりました。
  • 開発環境は、開発中のソフトウェアモジュールに対してリアルタイムのシステム統合とテストが出来るように調整されました。仮想化(Virtualization)が徹底的に行われ、約300のサーバによるアプリケーションと開発環境を実現しました。
  • ソフトウェアのビルドとデプロイメントは自動化され、各開発チームは複数のバージョンのソフトウェアを同時に効率的に管理することが出来ました。
  • 自動化されたリグレッションテストのフレームワークが不良を早期に検出し、アプリケーションの品質レベルを最高度に保ち、ソフトウェアに関する安全策(safeguard)の役割を果たしました。
  • ソフトウェア開発は小さなイテレーション(繰り返し作業)単位で進められました。そこでは、最も重要なもの、リスクの高いもの、トラブルが起こり易いもの、が優先されました。2週間毎に、機能は顧客に展示され(showcased)、レビューを受け、次のイテレーションのために開発の優先度が見直されました。
  • ThoughtWorksは、また、6週間毎のリリース、すなわち、3イテレーションで構成されるリリースのサイクルを、開発完了になるまで繰り返しました。

顧客にとっての利点

  • 高速開発と品質確保:ThoughtWorksは、運用可能で、実用的で、拡張性に富み、機能豊かなアプリケーションを9カ月未満で開発しました。また、同時に、ThoughtWorksは、新しい機能を6週間毎に提供し続けたのです。
  • 短く、単純な予約処理:ユーザは、予約をするのに少ない画面を見ればよく、貴重な時間も節約できます。このサイトを訪問した人の平均で、以前のシステムと比較して、ページ数にして約46%の節減で、時間的には以前の60%になっています。
  • イノベーションを支援:ThoughtWorksは、複数の顧客のポータルに拡張することの出来るポータルプラットフォームを設計し、開発しました。これにより、これら各々の顧客のブランドを改良し、各顧客間の製品の差異を表示することが出来るようになりました。
  • 安全性:アプリケーションは、いまや、フルセットの自動化テストを持っています。これにより最高レベル品質が保たれ、新しい機能を既存のシステムを壊すことなく追加することが出来ます。
  • 総合的な協業:距離が離れているにも関わらず、thetrainline.comとThoughtWorksは、非常に綿密な関係と相互理解を確立し、オフショア開発チームのための新しい標準を開発しながら、高度な共同作業を行いました。

thetrainline.comのIT DirectorであるRob Parkinsonは次のように述べています。
「thetrainline.comは、これまでも多くの他のベンダーとともにオフショア開発を経験しています。もしも、ビジネス的に重要で、技術的に複雑な開発をオフショアで行うのであれば、私の意見では、ThoughtWorksと組むのが一番安全な選択だと思います。彼等はオフショアでのソフトウェア開発を定義し直しており、私は、全面的に彼らのアプローチに賛同いたします。」

今後

thetrainline.comは、ビジネス的に厳しく、技術的に難しい問題を抱えていて、それが彼らに競争の厳しい市場での活動を抑制していました。ThoughtWorksとの協業の後、thetrainline.comは、今や安定した拡張性に富むシステムを持っていて、彼らが望む豊かなユーザ機能を提供しています。


thetrainline.comにより支援されている9つの鉄道運用会社のポータルは、新しいシステムの上で運用されています。他の鉄道運用会社への拡大も進められています。さらに、このプラットフォームはビジネス会社、旅行会社、コールセンターのポータルへも拡張が出来るものと考えられます。


thetrainline.comは、既存のプラットフォームを退役させることを進めつつあります。このことにより、コスト削減が可能であるだけでなく、新しいビジネスの機会が期待できます。更に重要なことは、今や新しいプラットフォームは、thetrainline.comが現在のそして未来の顧客に対して約束した「定常的な改革」を下支えしていることです。

原文:Case study - thetrainline.com(ThoughtWorks社サイト)

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