Simon & Schuster

Simon & Schuster は、ThoughtWorksの協力を得て、既存のWebsiteを、著者や読者にとって未来に挑戦できるオンラインサイトへと、素早く効率よく転移することを実現しました。ThoughtWorksは、これを実現するために「ユーザ中心設計(user-centered design)と「繰り返し型の分散アジャイルプロセス」を組み合わせました。後者では、ビジネス的に厳しく、技術的に挑戦度合いの強いプロジェクトを、オンショアとオフショアの混成チームで開発しました。この共同作業の努力の結果、10年の歴史を持つ古い米国のWebsiteを、コンテンツに富み、直観性が豊かな対話型のオンラインコミュニティへと、たった5ヶ月で変換することが出来たのです。

Highlights

顧客の概要

Simon & Schuster(S&S)は、CBS Corporationの一部門であり、1924年に設立された英語の出版業者で、世界的に主導的な位置にいます。この会社は、New Yorkをベースに印刷形式、デジタル形式、オーディオ形式での出版および配布を世界的に展開していて、カナダ、英国そしてオーストラリアに子会社を持っています。S&Sは、Simon & Schuster, Scriber, Free Press, Pocket Books等の有名な出版ブランドを持っており、年間で約2,000タイトルを出版しています。

S&Sが古いwebsiteを改修して、豊かなコンテンツとソーシャルネットワーキング機能を加えようとした時に、彼等は多くの会社が良く経験したのと同様のトレードオフの問題に遭遇しました。すなわち、「従来のプラットフォーム上で拡張を図るべきか、それとも、全く新しい柔軟なアーキテクチャーに乗り換えるべきか」との課題です。新しいアーキテクチャーは、魅力的に見えます。しかしながら、これに伴って加わる複雑性を管理出来るだろうか？ そして、現在の市場に彼らの書籍を売り出すために必要なすべての新機能を、作り上げることが出来るだろうか、それも、予算の範囲以内で？

新しいwebsiteでは、従来の機能に加えて、読者や寄稿者がマルティメディアで、対話的に、ネット上のコンテンツを収集・編集することを可能にするなどのWeb2.0の新しい機能や能力を提供する必要がありました。しかしながら、Simon & Schuster は、大規模ITプロジェクトにありがちな課題に直面したのです。まず、最初でしかも最も重要な課題は、要求項目を予算金額と予定期限の中で実現することでした。同社の出版部門およびマーケティング部門から要求されている多数の新規機能に加えて、Twitter, Brightcove media Player 等の23のサードプレイヤーのアプリケーション、および従来からあるデジタルコンテンツのデータベースを統合しなければなりませんでした。必ずしもすべての要求項目が最初から含まれている必要はありませんでしたので、新しいwebsiteは後から機能追加をすることも許されました。また、コンテンツに関する責任は複数の部署にまたがっていました。また、新しいコンテンツのデータベースの設計は別の部署の責任となっていて、プロジェクトの期間中に複雑度を段階的に増しながら、改良されていくことになっていました。

S&Sの技術予算の範囲内で最大限の価値を引き出すために、ThoughtWorksは、プラットフォームとしてのRuby on Railsを含むオープンソースの活用と、ThoughtWorksのオフショアフレームワークであるOptimum Offshore frameworkに基づく分散アジャイルプロセスの活用を提案しました。その目標とするところは、オフショア人材活用によるコスト削減とアジャイルによる工期短縮および柔軟性とを組み合わせることでした。また、Ruby on Rails は後続するリリースでの追加作業を容易にする効果を持っていました。

ThoughtWorks とSimon & Schuster は、最初のフェーズをSimon & Schuster のNew Yorkのオフィスで行うことにより、このプロジェクトを開始しました。この打ち合わせでは、密接な協業のもとに、既存のワークフローを見直し、その改善すべき点を決定し、最初の顧客要求項目リストを作成しました。ThoughtWorksは、ビジネス上の関与者が、この最初のリスト上の項目の優先順序付けをする手伝いをしました。この過程で、目標を達成するための、より経済的なアプローチを助言することもありました。結果として出来上がったロードマップには、同様のデザインのWebpageを取り扱うためのテンプレートや、改善のための要求事項に対応可能とする戦略的モデリングに基づくデータベースなど、コスト削減のための開発技術も含まれていました。ThoughtWorksは、S&Sに対して、OSS（オープンソースソフトウェア）を用いることによるコスト上の利益とビジネス上のリスクのトレードオフとともに、必要とされる技術力、システム要件、代替案も含めて、情報を与え、S&Sの決断を支援しました。

最初のフェーズの完了後、ThoughtWorksのインドのオフショアチームを使って、Simon & Schuster の製品管理チーム、新コンテンツデータベースチーム、およびその他の関係するチームとの緊密な連携のもとに、開発が始まりました。ビジネス上のビジョンと要求案件が正しく伝わるように、websiteは予定時間通りに繰り返し更新され、提供されました。この提供モデルは、ビジネス上の関与者から開発者への高頻度のフィードバックをもたらし、オフショア開発でよく起こりがちなミスコミュニケーションのリスクとその影響を削減しました。また、開発チームは顧客の豊かで直観的な経験を生かすために、プロトタイピングやユーザビリティテストなどの「顧客中心設計（User-Centered Design）技術を活用しました。

新しいサイトは、公的リリースのひと月前にSimon & Schuster の全従業員に対してアルファリリースされました。これは、プロジェクトを開始してちょうど4か月後のことでした。このアルファリリースは、公的リリースの前に多くの人々からのフィードバックをもたらしました。従業員からのフィードバックはこのサイトの将来の改善要求プロセスへと反映されたのです。

ThoughtWorks と Simon & Schuster の合同チームは、コスト効率の良いオフショアチームを使いながら、5か月で米国の新しいwebsite を成功裏にリリースし、これに続いて、Pimsleurブランド向け、カナダ向け、英国向けの4つのwebsite を、次の4半期で完成させたのです。分散アジャイルプロセスは、最高度の透明性と、リスク最小化のためのフィードバックをもって、ビジネスユーザからみて各々のイテレーションでの開発がどれほどに進んでいるか、を見えるようにしたのです。

新しいSimonandSchuster.comは、改善され、単純化されたナビゲーション機能を持っています。検索機能は、本、著者、トピックおよびカテゴリーを容易に見つけられるように改良されました。新しいwebsiteは、旧来と同様に、S&Sの著者たちを著者としてだけではなく、パーソナリティー、エクスパート、読者、そして著名人として扱うことを可能としています。この著者に関する鑑定者、観察官として働き、web上の著者に関するコンテンツを収集し、それがニュースであっても、Twitter, blog投稿、メディア情報、個人情報およびイベントであっても、ファンが著者による、あるいは著者に関するアクティビティを、フォローできるようにしたのです。150人以上の著者が、特別なオリジナルコンテンツをリリース時に提供し、さらに新たな情報が日々に追加されています。

原文：Case study - Simon and Schuster(ThoughtWorks社サイト)